Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

そして、そこからロイの隣に移動する。

「代わるわ」

火の番を交代することを申し出たのだが、

「いや、今さっきローグと代わったばかりだ。
休んでいてもらって構わない」

ロイはそう言った。

だが、そう言われても、あんな夢を見たあとでは何だか眠れそうにない。

そんな気がしてジルはロイの隣に座り込んだ。


パチパチと焚き火の爆ぜる音だけが聞こえる。

二人とも無言だった。


明日にはロイの弟がいるブラッド・スネークのアジトへと辿り着くことだろう。

彼はいったいどういう行動に出るのだろうか。

そして私は、ザックの妹を救い出して、その後どうすればいいのだろうか。


「あんたって、昔からそんな性格なのか?」

ぼんやりと焚き火を見つめていたのだが、不意にロイからそう訊かれ、ジルは彼の横顔に視線を移した。

整った横顔だ。

彼は火が消えないように一本の薪を焼べ、小枝で灰を弄っている。

「夜中に突然押しかけたり、昔話を聞き出したり…。
単純に人のことを心配してだろうが、ほどほとにしとかねぇと単なるお節介になっちまうぜ」

ロイに対してのことだろうか。

そう。ジルはロイの妹の話を聞いてから、彼の傷をどうにか癒すことはできないかと思ったことは街がいない。

だが、口から出たのは可愛くない台詞になってしまった。

「嫌なら別についてこなくても。
場所を教えてくれるだけでよかったのに」

それを聞いたロイ、ふっと笑って言い返す「なんだよそれ」。

「あ、いや。…ごめん」

本当に可愛くないと思う。


最初はただミシェルを救いたい。
ザックのことも。

自分のせいでロイの悲しい過去を掘り起こしてしまったのは事実だが、それを聞いて「あ、そうなんですか」とは引き返せない。

そう思ったからこそ、今こうしてロイと共にブラッド・スネークのアジトへと向かっている。