ジルはそこで目を覚ました。
ゆっくりと瞼を開く。
やはり夢だったのか。
しかし、なぜ今になって昔の夢など見るのだろう。
ロイの過去の話を聞いたからだろうか…。
ジルは深く溜め息をつくと、辺りに視線を移した。
ゴツゴツとした岩肌をオレンジ色の焚き火が照らし、そのに人影を映している。
影は子供の頃に想像したお化けのように伸び、炎が揺れると共に同じように揺れていた。
そこは岸壁をくり抜くようにしてできた岩穴だった。
広さはそれほどでもないが、ここでなら多少の雨風があっても凌げるだろう。
そうして今日の野宿の場所をここに選んだのだ。
半身を起こすと、ロイが焚き火の前で座っているのが分かった。
先ほど見た影はロイのものだったようだ。
彼は火の番をしてくれていたのだろう。
目を覚ましたジルをチラリと一瞥したが、またすぐ焚き火へと目を移した。
ジルは自分に掛けられている布があることに気がついた。
焚き火の明かりに照らすと、それはローグのマントだった。
すぐ隣ではローグが背を向けて横たわり、眠りに着いている。
彼はいつもさりげなく気を遣ってくれていた。
言葉遣いが乱暴なのはその照れ隠しだろうか。
ジルはそのマントをローグの肩に掛けてやった。
彼の気遣いにそっと礼をするように。

