Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

次に映ったのは、どこかの酒場のようなところだった。

あちらこちらで男女たちかテーブルを囲い、ビール片手に談笑している。

とても賑やかだ。


そんな中で、カウンターに着いていた男女が揉めている。

男は中年で小太り。

そして女は、やはりこれも自分だった。

何年か前だろうか。
今より少しだけ若い自分。


男は必死の形相で女に向かってまくし立てていた。

財布がどうの…、スリがどうの…。
そんな事を言っている。

そういえば隣に座っていた男の財布がなくなり、スリだと因縁をつけられたことがあった。

反論する女。


すると一人の若い男がそこへ割って入った。

青年は手に持っていたものを中年に渡し、説明をするように話している。

ローグだった。

彼も少し今より若い。

店の前に落ちていたものを拾った。
そう話している。


女はそこでその場を離れた。

中年の男と青年の脇を擦り抜け、礼を言うわけでもなく店の外へ出ていく。


勝手に中年が勘違いをし、自分を犯人扱いした。
こちらとしてはいい迷惑だ。

なぜ、礼を言わなければならないのか。


そんな女を青年が追った。

仏頂面の女に青年は照れながら笑顔をこぼす。

それがジルとローグの出会いだった。


所詮、他人など信頼できない。
頼れるのは自分だけだ。

そう思っていた過去のことだった。