Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

戦い慣れた二人のコンビネーションは見事であった。

ジルが獣の爪をダガーで受け止め、体勢を崩すと、すかさずそこへローグが割り込み、獣の気を引く。

そしてローグが追い詰められると、ジルが奴の気を引きにまわる。

獣は二人を相手に翻弄されていった。


しばらく同じような攻防が続いたが、二人の体力は限界に近づいていた。

激しく動く無酸素運動に二人の息が上がり始める。

それに対し、獣の体力は充分に残っているように見える。

そろそろ決着をつけなければ。

ジルは内心焦っていた。

しかし、その一瞬の思考が次の攻撃の手を遅らせてしまった。

放ったパンチが躱されると、脇腹に鈍い衝撃を感じ、そのまま吹っ飛んだ。

「ジルっ!!」
ローグが叫ぶ。

モンスターの体当たりをまともに喰らい、茂みの根元に倒れる。

痛みと共に吐き気が込み上げてきた。

素早く起き上がることができず、それでも体勢を立て直そうとしたとき、ジルはその状況に凍りついた。


陽の光を遮った大きな図体。

獣がジルに馬乗りになるように覆い、今にも頭を噛み砕かんとしている。

しまった。
殺られる。

鋭く長い牙がヨダレを滴らせて迫り来る瞬間、ジルは硬く眼を閉じた。