「それなら、明日じゃなくても、乗合馬車の定期便がくるまで待てないの?」

ミシェルはキラキラと瞳を輝かせながらジルに向かって言った。


乗合馬車の定期便とは、街や村を繋ぐ馬車バスのようなもの。

定期的に便があり、人や物資を運ぶ役割がある。

賃金を支払えば、誰でも簡単に利用可能だ。

ジルも何度か利用した経験があるが、今回は使うつもりはなかった。

そもそも今回の旅は修行目的を主として、身体を鍛え直そうとした理由からだ。

楽な馬車など言語道断だと思っていた。


しかし、ミシェルはそんなジルの事情などお構いなしに、

「定期的がくるまで待ってよ。
そしたら私も一緒に行けるんだから」

と、なんだか楽しそうな笑顔をしている。


私も一緒に??

言っている意味がよく分からない。


ジルが尋ねると、彼女は次の定期便でグランドヒールに出ると言うのだ。

村で採れた野菜や、女たちが拵えた反物を持って売りに出ると。

村では数が月に一回、誰かがその役割に当たる。

次回はミシェルがその番らしい。

「ね。こんな機会、初めてだからさ。
私、ジルと一緒に旅を楽しんでみたいの」

そうミシェルは懇願した。


ミシェルはよくジルたちの旅に興味を示していた。

話を聞いては興奮し、更に聞いては感動する。

もしかしたらミシェルは、自分たちのような冒険者になりたかったのかもしれない…。
とジルは感じていた。

そんな思いが少しでも実現するかもしれない。

彼女はそう期待し、ジルに頼んでいるのだった。