「ローグのことは大丈夫よ。
帰ってきたら、私は先に行ったって伝えて」

ジルはミシェルに感情を悟られないよう、仄かに微笑んで言った。

だけれども、ミシェルは納得していないようで、「でもぉ…」と呟く。

そして、何か思いついたようにパッと表情を輝かせて口調を変えた。

「ジルが決めたんならしょうがないか。
で、グランドヒールに向かうんでしょ?」

「うん。そうだけど…」

<グランドヒール>というのは、ここからタティウスの丘を越えた向こう側にある都市のこと。

丘の麓にある大都市で、ここいらの地域の動線の中心になっている都市だ。

ジルの向かう目的の場所はグランドヒールではないが、まずはグランドヒールに行かなければ次へ進めない。


田舎とは違う最先端の都市。

ジルはそんなイメージを持っていた。

なにしろ人口が多く、活気もリィズ村とは比較できないくらいすごい。

生活スタイルやファッションも時代を先取りしている感じで、おまけに最近では最先端の鉄道を引く工事が進められているとの情報もある街なのだ。