マルメロは椅子に座り考えます。

「サイネリアが変わった」

クンシランが亡くなる前のサイネリアと今のサイネリアは何かが大きく違いました。
しかし、その何かが分からず気味の悪さだけを感じるのです。
表情がコロコロ変わる、感情の高まりがある…、そんな事ではない何かです。

「嫌な感じだわ…」

マルメロは呟きます。

「敵にまわしたくない相手ね。注意が必要だわ」

以前までのサイネリアなら、敵になったとしても問題はありませんでした。
しかし、今のサイネリアを敵にまわす事は危険だとマルメロは考えたのです。

首につけている金のペンダントを握りしめます。

「大丈夫。このペンダントをお互いにつけている間は親友よ」

マルメロは立ち上がりベッドに向かいます。

「少し疲れたわ」

ベッドに横になり、ボーッとペンダントを見つめました。

「お母様、無事よね?」

このペンダントは母親の物でもあります。
「必ず返す」と、約束し借りている物。

「このペンダントがある限り、お母様も無事よ」

マルメロは、目を閉じ少し眠ることにしました。



「王が死んだ!」


ハッとして目が覚めます。
ベッドから起き上がり、廊下に走りでました。

静かな廊下、騒いでいる声は聞こえません。

「夢…?」

マルメロは、自分に呆れます。

「何をそんなに怯えているのよ?」

マルメロはため息が出ました。
窓を見ると真っ暗で、もう夜だと分かります。

「随分、寝てたのね」

マルメロは自室に戻ろうと思いましたが、ふと頭に「ストケシア」と浮かびました。

「もう、私の頭はどうなってるの?」

マルメロは、自分を馬鹿馬鹿しく思い笑ってしまいます。
しかし、ストケシアと会話をするのは楽しいと思い直すのです。
気分の悪くなるばかりだった今日を、ストケシアに話してスッキリしたくなりました。

「確か、毎夜テラスに来てるって言ってたわね」

マルメロは自室に戻るのを止め、テラスへと歩き出しました。