ハンノキからの求愛にウンザリしていたマルメロに少し興味のある話しが舞い込んできます。

ハンノキが手紙を見ながらマルメロに言いました。

「おお!マルメロよ、あいつが結婚するみたいだぞ。招待状だ!」

「あいつ、とは誰ですか?」

「あいつだ、あいつ!アザレアだ!」

マルメロは驚きました。
領土主の息子アザレアの名前が出たからです。
マルメロは聞きます。

「ハンノキ様、アザレアとは領土主の息子様ですよね?」

「そうだ!ワシとマルメロが運命的な出会いをした日を思い出すなぁ」

「…、そうですね。で、アザレア様は誰と結婚されるのですか?」

「がははは!聞いて分かるのか!?」

「ええ。心当たりがございまして…」

マルメロは、あの夜の屈辱を思い出し苛立ち始めます。
相手は、マルメロにとって最大の敵だと確信したからです。
ハンノキは、笑いながら言いました。

「待てよ…、え〜。お、あった!サイネリアだ!」

マルメロの予想通り、憎きサイネリアの名前がでました。

「あら。私、サイネリアを知っていますわ」

冷静にハンノキに言います。

「ハンノキ様と出会った夜に、私はサイネリアとも出会いましたの。隣町の貴族だと聞きましたわ」

「おお!マルメロの知り合いか!隣町ということは、引っ越してくるのか!これは、大掛かりなことだな」

「サイネリアは嫌がっていたのですがね…。まさか、結婚するとは。よほどの理由でもあったのかしら?」

マルメロは敵意をむき出しにして厭味たらしく言いました。
ハンノキは大笑いして言います。

「何だ?サイネリアが嫌いなのか?」

「いえ、全く興味がありませんの。それだけです」

「がははは!女の戦いとは面白い!マルメロよ、応援するぞ」

ハンノキは、鋭いところがあります。
マルメロはハンノキの鋭い所は認めてあげていました。

「ライバルなんかじゃありませんわ。で、いつ式ですの?」

「一ヶ月後だな。全く、急な奴だ!マルメロよ、サイネリアに負けないように何か買ってやろう!」

「いりませんわ。私は私のままで行きます」

「がははは!さすがはマルメロだ!」

ハンノキは笑いのツボに入ったようで、ずっと笑っています。
一方のマルメロは全く笑わず、ただハンノキを見下ろしていました。