蒼く晴れ渡る空。

雲一つありません。

ハンノキの大きな笑い声。

町の人々の好奇の目。

その目の先には、純白のドレスを身にまとい凛々しく美しい女性が微笑んでいます。

「信じられない…。あれがマルメロか?」

洗練された雰囲気のマルメロを見て人々は驚きます。

今日は、マルメロ16才の誕生日。

そして、結婚式の日です。

マルメロの母親も、豪華な衣装を身につけ自慢げに笑っています。

「なんでマルメロが、あそこに居るんだ…」

人々は、マルメロを見て羨ましく思います。

突然、ハンノキが叫びました。

「今日、マルメロと契りを交わした!祝福をしてくれ!」

人々は、ハンノキに招待されていたため拍手を送ります。
ハンノキは満足げです。
かわいい花嫁を一人でも多くの人に見せたかったハンノキは、町の人々を大勢招待しています。
人々は、マルメロ見たさにハンノキの招待を受けました。
しかし、いざマルメロを見ると「悔しい」という感情しか沸いてこないのです。

それは、ハンノキの笑い声やマルメロの母親の自慢げな顔に対してではありません。

マルメロの澄ました顔、人々を見下した目に対してです。

「ほら、見なさい。私が正しかったでしょ」

マルメロが言った訳ではないのですが、そんな雰囲気をマルメロは放っていました。

純白の美しいドレスを揺らし、背筋を伸ばして歩くマルメロは完璧な女性に見えます。
そして、片方の口角だけを上げ笑うマルメロは独特の魅力を持つ女性へと成長していました。

しかし、結婚式はマルメロにとっての序章に過ぎません。

人々の好奇の目なんて、マルメロには興味がありませんでした。

「早く終われば良いのに」

マルメロは小さく呟き、空を見上げました。