「おい、聞いたか!?マルメロがハンノキと婚約したらしいぞ!」

「いや、婚約はまだらしい。マルメロが断っているんだと。生意気な奴だ」

「最悪の二人が結ばれるのか!お似合いだな」

すでに、町中ではマルメロとハンノキの噂がささやかれています。

マルメロは相変わらず、堂々と道の真ん中を歩いています。

「嫉妬ばかりね。ふふ、面白い」

マルメロは町中の人々が、嫉妬していると思い優越感に浸るのです。

マルメロの考えも、検討はずれとは言えません。

なぜなら、町の人々は少なからず羨ましくも思っていたからです。
最低、最悪のハンノキですが、町1番の金持ちです。
もちろん、権力もあります。

貧しい暮らしをしている者からすれば、マルメロが羨ましくて仕方ないのです。
普通の暮らしをしている者も、マルメロが少し羨ましく思います。

優雅な暮らしが約束されているのだから。

マルメロは、その事も分かっていました。
だからこそ、優越感を感じ町中を堂々と歩いているのです。

「あぁ、明日が楽しみだわ」

マルメロは思いました。
明日が、ハンノキに提示した約束の日だからです。

ニヤつく顔を隠しながら、家へと帰りました。


家につくと、郵便受けに手紙が一通届いていました。

サイネリアからの手紙です。

マルメロはサイネリアの名前を見た瞬間に、あの日の苛立ちを思い出しました。

「よく、手紙なんて送ってこられるわね!」

マルメロは苛立ちながらも手紙を自室に持ち込み、ゆっくりと封をあけました。
可愛らしい便箋に、美しい字が書かれています。
マルメロは、少し緊張しながら内容をみました。
とても、嫌な予感がしたのです。

そして、マルメロの想像通りの内容でした。