ハンノキは上機嫌でマルメロに語りかけてきます。

「ワシは君を気に入った!初めて見た瞬間に運命を感じたのだ!」

「私は運命なんて感じてません!」

「そんな強気なところも最高だ!ワシはハンノキという。君の名前を教えてくれ!」

「嫌です!ついてこないで!」

マルメロは、走り出しました。

ハンノキは大声で陽気に叫びます。

「また、会おう!!」

マルメロは「図々しいにもほどがある!」と、苛立ちながら走りました。


結局、舞踏会では何の成果もあげられませんでした。

家に着くと、すぐに自室にこもりました。

「何なの!?信じられないわ。貴族なんて大嫌いよ」

「サイネリアって女に少しでも気を許した私って馬鹿ね」

「まだまだ修業がたらないわ」

マルメロはドレスを脱ぎ捨て、サイネリアからもらった住所を破り捨てました。

「誰も信じない!誓ったじゃない!」

マルメロは自分を叱りつけ、紙を取り出し殴り書きます。

「二度と気を許すな。周りは敵だと思え!」

紙を睨みつけ、マルメロは少しずつ落ち着きを取り戻しました。

完璧に落ち着いたマルメロは、笑いが込み上げてきました。

「貴族ですら、私の魅力が分からないのよ!本当に特別って大変だわ」

勝ち誇った笑みを浮かべ、ベッドに横になりました。

「また、会おう!!」

マルメロはハッとしました。
ハンノキの最後の言葉を思い出したからです。

「本当に、嫌な人だわ」

マルメロは呟き、忘れようと目を閉じます。

しかし、ハンノキの嫌な言葉が頭を過ぎり寝れないのです。

「ハンノキめ、気分が悪い!」

苛立ちを抑え寝ようとすると、ハンノキの言葉が出てくる…。

その繰り返しで、朝がきてしまいました。