会場内に入ったマルメロは驚きました。

見たこともない、華やかさ、豪華さ、香り、です。

金色と白色がまぶしくて目が開けられないほど輝いています。
色とりどりの衣装を纏った男達に女達。
様々な種類の料理に飲み物。

マルメロは口をあけたまま、固まってしまいました。
しかし、すぐに気を引き締め中へと進んでいきました。

貴族達は気軽に挨拶をしてきます。

「ご機嫌よう」

「お久しぶりですね」

「今日も、お美しいこと」

会った事もないマルメロに、失礼にならないよう貴族は知ったかぶりをします。

マルメロも、適当に返事をしながら思いました。

「貴族も外見だけね。中身がまるでないわ!余裕、余裕!」

笑いが込み上げてきますが、すました表情を崩さないよう注意します。

「どれが、息子かしら?」

マルメロは目で探しました。

しかし、どの顔も同じに見えてしまい全く分かりません。

「1番重要なのに!!」

マルメロは焦ります。

すると、隣にいた女性が話しかけてきました。

「この舞踏会の、本当の意味をご存知?」

マルメロはハッとして答えます。

「ええ。噂、程度ですけど。ご存知ですの?」

「勿論。ほら、あそこにいらっしゃる男性。あの方の婚約者を選ぶための舞踏会ですのよ」

マルメロは言われた方向を見ました。

細くて、白くて、小さくて…、いかにも弱そうな男性が笑っていました。

マルメロは内心、「嫌だわ」と、思いました。

すると、女性が少し笑いながら言います。

「こんな舞踏会を開かないとお嫁様を見つけられない男性ですもの。ふふ、無理もないわね」

マルメロは、この女性が気に入りました。
とても、楽しい話し方をするからです。
それに、マルメロ好みの気が強そうな女性です。

マルメロは言いました。

「私はマルメロと言います。失礼ですが、お名前は?」

女性は、急に笑い出しました。