夜は、ドレスの形を考えました。

「足元を隠すにはギリギリね。大胆に肩を出しちゃいましょ」

マルメロは、楽しくて仕方ありません。
自分を着飾らせる事に幸せを感じていたのです。

髪型も練習します。針金を曲げ上手い具合に結い上げていきます。

「私って、本当に手先が器用だわ」

ゴワゴワの髪がピタッとまとまります。

マルメロの鋭く冷たい雰囲気が強調され、誰も近づけないほど恐そうな女性が鏡にうつりました。

マルメロは「完璧だわ」と、自分にウットリします。

マルメロ理想の女性が鏡にうつっていました。

「やっぱり私って素晴らしいわ!領主の息子なんかの嫁じゃ物足りないくらい」

まだ、何も決まっていないのにマルメロは愚痴を言いました。


翌日から、マルメロは衣装の制作に力をいれます。

マルメロの家にミシンなんてありません。
全て手縫いになります。

「1秒も無駄にできない」

マルメロは、淡い紫が美しいラベンダー色の布を型紙にあわせ切っていきます。

そして、丁寧に丁寧に縫っていくのです。
自分で考えた衣装の形ですから、頭には入っているのですが難しすぎました。

「誰よりも美しいドレスを着る!」

そう思い、昨夜に必死で考えたドレスの形は複雑でした。
マルメロは、時間のかかる難しい針仕事にウンザリしてきます。

「欲を出しすぎるとダメって事ね」

マルメロは、自分を咎めながらも妥協はしません。
何日も何日も、抜い続けました。

舞踏会の前日に、やっと出来上がりました。

胸元とスカートのフリルが美しい見事なドレスです。
ラベンダー色が更に気品を増して見せてくれます。

素人が作ったとは思えないほどの出来栄え。

マルメロは疲れていましたが、ドレスを見て大満足です。

「完璧だわ。さすが私ね」

マルメロは出来上がったドレスを見つつ、知らぬまに寝ていました。