札束を持った男が怒鳴ります。

「これでも、証拠がないって言えるのか!?金で何とかしようなんて汚いやり方だ!」

マルメロは考えています。

ストケシアは小さな声で「違います。違います」と繰り返しています。

人々は怒鳴ります。

「マルメロ、答えろ!」


マルメロは立ち上がり人々を睨みつけ言いました。


「私が無理矢理に頼みました。」


ストケシアの目が大きく開きます。

人々は、どよめきます。

マルメロは凛として言います。


「ストケシアは嫌がっていましたが、私が無理に頼んだのです。ストケシアは犯罪者ではありません」


ストケシアは、何とか体を動かそうとジタバタしています。

「違う…、違う…!」

口が思うように動かず、ストケシアは話せません。

マルメロはハッキリと言います。


「私が一人で全てやりました」


人々は、殺意の目でマルメロを睨みつけます。

ストケシアは、立ち上がることもできません。

マルメロは静かに言います。

「私を裁いて下さい」


札束を持っていた男が怒鳴ります。

「マルメロに死罪を!」

周りの人々も「死罪!」と騒ぎ出します。

ストケシアは「違う!違う!」と言っていますが、誰の耳にも入りません。


男がマルメロを掴もうとした時、一人の女性が部屋に飛び込んできました。


「違う!マルメロじゃないわ!」


人々は、静まり返ります。

「マルメロを死罪になんかにしないで!!」


泣き叫び訴える女性は、サイネリアです。


人々だけでなくマルメロも驚きました。

あのサイネリアが、マルメロを擁護しているのです。

サイネリアは涙を流し、混乱したかのように叫びます。

「お願い!!マルメロを死罪になんかしないで!お願いだから!」

膝をつき、祈るように悲願するサイネリアの叫びは、あまりに痛々しくて人々は目を逸らしてしまいます。

「マルメロは何もしてないわ!お願い、お願いよ!!」

マルメロには分かりません。
なぜ、サイネリアがこんなにも必死なのか。

自分を嫌っていたはずだからです。