ハンノキとストケシアが帰った部屋。

マルメロは、自分の素直な気持ちに気がつきました。


「私は死が嫌ではないわ」


マルメロは、自分でも信じられませんでした。

死ぬ事は、恐いです。

しかし、嫌ではないのです。

とても不思議な気持ちでした。

もう、全てをやり終えた、そんな気持ちなのです。

なぜ、こんな気持ちになったのか。

それは、自分の夢を思い出したのです。

幼い頃、虐められ悪口を言われ続けた自分。

その頃の夢。

それは単純で、でも難しい夢でした。


「ただ、認めてほしいだけ」


たった、これだけの夢。

それから、大人になるにつれ夢が野望のように膨らみました。


「1番になり、全ての人間に認められ幸せになる」


大人になってからの夢。

似ているようで、全く違います。

マルメロは、その事にようやく気づけたのです。

気づいた時、とても満足感を得ました。

母親、ハンノキ、ストケシアに認めてもらえていた自分。

なぜ、今まで気づかなかったのか分かりません。


もう、夢は叶っていたのです。


「欲張っちゃったわ」


マルメロは苦笑いして、自分を咎めます。

自分の夢は叶った、それに気づいた時に死が嫌ではなくなったのです。


「十分、立派な人生だったわ」


マルメロは覚悟を決めました。


しかし、そんなマルメロの覚悟を邪魔する事件が起こります。