家に帰ると、男性はいませんでした。

母親が猫なで声でマルメロに話しかけてきました。

「マルメロの誕生日を忘れてた訳じゃないのよ。今日が何日だったかを忘れてただけなの。許してね」

無茶苦茶な言い訳に、マルメロは呆れました。
しかし、マルメロは特に気にしていなかったため言いました。

「別に良いわよ。あの男性は?」

「あぁ、彼とは別れたわ!マルメロに酷い事を言ったからね。あんな最低な男だとは思わなかった!」

マルメロは馬鹿馬鹿しくなりました。
母親が嘘をついてるのが分かるからです。
男性に頼み、マルメロに暴言を吐かせてたことを無かったことにしようとしています。
本当に別れたのかは分かりませんが、マルメロにとっては何ら関係のない話しです。

マルメロは冷静に言いました。

「そうなのね。まぁ、その方が良いわよ」

母親は、力強く答えます。

「そうなの!あの男は最低よ!暴力だってあったのよ!?私が、どれだけ泣かされたことか…。金もないし、不細工だし。何が良かったのかしら!?」

マルメロは聞きたくもない話しを聞かされ苛立ちます。

「お母様が選んだんでしょ。私に聞かれても知らないわよ」

「冷たいわね!マルメロには、可哀相という感情はないの!?」

「あるわよ。正当な理由なら可哀相と感じるわ。でも、お母様のは理由じゃない。ただの愚痴よ」

「何なの!?本当に可愛いげのない子ね!そんなんだったら、一生結婚は無理ね!」

「さぁ、どうかしら?私は、選ぶ立場なのよ。私が気に入る男性がいれば結婚を考えても良いわ。でも、選ばれての結婚はごめんね」

「よくもまぁ!!信じられないわ!自分の顔をよく見なさい!」

マルメロはカッと頭に血がのぼりました。

「私の容姿について、貴女にどうのこうの言われたくない!」

「母親に向かって、貴女なんて言うんじゃないわよ」

母親は、少しニヤつきながら言います。
マルメロが容姿を気にしている事に気づいたからです。
母親は、わざとらしく言いました。

「マルメロは、父親似だからね。仕方ないわよ」

「聞いてないでしょ!もう、ほっといて」

マルメロは、母親との喧嘩を中断し自室に向かいました。
母親は笑いながら言います。

「可哀相なマルメロ」

マルメロは、激しく苛立ちましたが無視をして自室に戻りました。