仕事の辛さをマルメロに愚痴る日々。

マートルにとっては平和な日々でした。

辛い事を辛いと言える事に幸せを感じていたのです。
マルメロは健気にマートルを心配します。

「お母さん、無理しないで」

「お母さん、元気を出して」

「お母さん、泣かないで」

マルメロの慰めがマートルの疲れきった心を癒してくれます。

「生きてるのが辛い」

マートルは口癖のように言います。
その度に、マルメロは心配そうな顔で励ましてきてくれます。

「お母さん、生きて」

マートルは、この言葉を聞くと自分が必要とされてると感じるのです。
マルメロとなら、ずっと二人でやっていけると思っていました。



しかし、マルメロの歳が上がると変化があったのです。

「そんなに愚痴ばかり言わないで」

「言っても変わらないよ」

「愚痴じゃなくて文句だよ」

マートルにとって、厳しい言葉でした。

どんどんマルメロが離れていくのを感じたからです。
悲しくて、更にマルメロに愚痴を言います。

「生きてるのが辛い」

マルメロはこの言葉にだけは反応を示すため、必ず最後に言うようにします。

マルメロに「生きて」と言ってもらいたくて。

しかし、マルメロは何も言わなくなります。
部屋に篭るようになり、お洒落を楽しむようになっていくのです。
マートルは、何故か娘の成長が嫌で堪りません。


「マルメロが私を捨てる」


マートルは不安で仕方なかったのです。


「マルメロに嫌われている」


嫌な思いがマートルの心を苦しめます。


「一人は嫌!!」


マートルはマルメロに愚痴という形で甘えます。
しかし、期待通りの反応がもらえず不安感が増すばかり。

寂しい毎日を過ごして、マートルの愛情は歪んだものになっていきます。

マルメロを罵ることで、自分の存在を訴えるようになります。

「マルメロが謝ったら許してあげるわ」

マートルは、必死でマルメロからの愛情を欲していました。