涙が勝手に溢れ出してきて、ヒカルの目前で、シクシクと泣き出した。


目の前に立つヒカルが困惑しているのが、手に取るように分かる。


泣いたってしかたない。

こんな姿、弟に見せたくない…と思うのに、止められなかった。


ヒカルの右手が美紗の腕にそっと触れる。


「…なんで泣くの?あいつ、結婚してんの?二人は不倫関係?」


「…!」


思い切り、美紗は首を振った。


「じゃ、結婚て話になるでしょ」


「…ならないかもしれないじゃない!」


いきなり、美紗はくしゃくしゃの泣き顔を上げ、涙声で訴えた。


「ならなかったら、どうしたらいいの…」


美紗は幼い子供のように、号泣した。

ヒカルにこんなことをいっても仕方ないのに。

感情が暴れるのを止められない。

何者かが内側から身体を乗っ取ろうとしている気がした。


「美紗、泣くなよ。大丈夫だって。
もし、遊びだったら、俺、あの男ブッ殺してやっから。
…デキ婚なんて、掃いて捨てるほどいるし」


ヒカルが一生懸命、美紗を元気付けようとしてくれているのが、わかった。


美紗の心は安らぎを感じ、ヒカルの言葉にうなづく。