失礼ねえ!と言って手を伸ばし、ヒカルの頭を引っ叩く。


ヒカルは、いってえ!とオーバーに頭を押さえ、笑いながらゴメン、と謝った。


美紗も笑った。

弟とビールを飲みながら、こんなに楽しく会話出来るなんて、思ってもみないことだった。


さっき誠と気まずく別れたことも
忘れられた。


「新婚旅行はオーストラリアにしろよ。じゃ、俺寝るから。
明日は朝から宅配便の助手やるし」


唐突にヒカルは言い、ソファーから立ち上がる。

えっ…寝ちゃうの?と美紗が言いかけていたが、ヒカルはさっさと自室に引き上げてしまった。


テーブルの上にヒカルの握りつぶしたバドワイザーの空き缶が置かれたままにされていた。


それを見ているうち、ふと、美紗は
誠が恋しくなった。


携帯を手に取り、脚を組んでメールを打ち始めた。



[起きてる?さっきは不機嫌な感じにしてしまってごめんなさい。
何も怒ってないよ。
気にしないで。
弟と初めて、ビール飲みながら話をして、あの子の成長を感じました。
って私、ヒカルの母みたい(笑)
明日、誠が暇なら逢いたいな。]