ああ、男…あの少女の兄。

やはり暗くて鮮明には分からなかったが、泣きじゃくる少女より顔付きは分かった。

黒く少し長い髪は後ろに流されていた。

少し切れ長の目。


ああ、そうだ。
無駄に整ってた。


だけどそれ以上は思い出せなかった。


…どこかで見た事あるような気がするけれど、それも思い出せない。


後一人、誰か居た気がするけど、もういい。
気を紛らわせたかったけど、思い出すのもは中々疲れた。


「あっ」


ジャケット――…


あの時、少女に掛けたまま忘れていた。


…まぁ問題はない。


逆に良かったのかもしれない。


あれは縛るのだ、自分自身を。


それにあれは帰ってくる…自分の元へ。


自分の罪を、過ちを―…


あれは許すはずもないのだから――。