気がつくと、面白くもない冗談を持ってきた隻腕の男と、見慣れた医者がいた。
 娼婦などをしていると病に罹りやすくなる。
 医者とは嫌でも親しくなった。
「私……一体」
 隻腕の男が泣きながら無事な左手で私の手をつかんだ。
 医者がにっこりと笑った。
「ご主人の事はお気の毒だったが、強く生きて下さいよ。貴方は人の母になったのですから。おめでとうございます。三か月ですよ」
 ああ、シュンは私のお腹の中に帰ってきたのだ。
「シュンは、死んだのね」
 必ず生きて帰ってくると約束したのに。
 だけれども、もう一つの約束は守った。
 私を天涯孤独の身の上にはしないと。
 そしてその言葉通り、私には赤ちゃんがいる。
 半年間も誰とも寝なかったのだ。シュンの子に間違いはない。
 たった七日間睦みあっただけなのに。
 今、確かにお腹の中に一つの命がある。
 その奇蹟。
 おかえりなさい、シュン。