ハルが椅子を持って戻ってくると、 その椅子にゆっくり座った。 それを見て尚毅さんは舵場にもう一度立つ。 「なんか、ちょっとスッキリした?」 「へ?」 「さっきより明るいよ」 ハルがニコニコしながらそう言ってくる。 たぶん、尚毅さんに話したからかな。 「そうかな?」 「うん。今の方が全然いいよ」 ハルはぽんぽんとあたしの頭を撫でると、 船内に入っていった。 それから、日が落ちるまでただ黙って潮風に吹かれながらそこに座っていた。