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あれからどれほど経ったのだろうか。
手紙を読み終えると、お父さんは涙を流して震えていた。
「…ここに置いとくから。見たい時に見てね?」
「あぁ…ありがとう」
「お母さんは今でもお父さんのこと愛してるんだね」
あたしはそっと椅子から立ち上がる。
「お母さんと離れた理由はね、お前を守るためだよ」
え?
「気になっていたんだろう?」
いつの間にか、涙も流していないお父さんはあたしを優しく見つめている。
もう、バレてたんだ。
「うん、」
「お父さんは代々受け継がれてきた本部長を継がなくてはならなかった。だけどね、妻ができてそばに置いておくといろいろと危険だったんだ」
「危険?」
「常に、本部長として海にでていたからね」
「どうして危険なの?」
「お母さんのお腹には日奈がいたからだよ。
海賊界の暗黙の領域で家族は一緒に船の上で暮らすことになっている」
だから、りくくんも船の上に…。
「ここにいると、それは絶対。
だから安全なあの場所に送り届けた」
だけど、ナギは夫と別々だって言ってた。
「別々の人もいるよね?」
「あぁ、それは夫が海に出ていないからかな」
「海に出ていないから…?」

