「課長がここら辺だなんて知りませんでした」
「俺は普段は車だからな。それに最寄りは向こうの私鉄沿線だ。雪村はこっちの地下鉄だろう?」
「あぁ……」
なるほど、と思う。
ここの街は二駅沿線が使える。
私がよく使う地下鉄と課長が言う私鉄沿線に挟まれており、それぞれ徒歩で20分程度の距離にある。
私は家からだと地下鉄が近いが課長は私鉄沿線が近いのだという。
しかし車だから大通りが近いこちらのコンビニに寄ったのだろう。
それにしても買い物は同じ地域エリアだ。私鉄沿線の方のスーパーにも買い物へ行くこともある。よく今まで合わなかったなと思う。
「今帰りなのか?」
課長は私の籠をチラリと見て聞いてくる。
しまったな、って思った。
神林課長と最後に会ったのは二時間前。
急いで帰った部下がコンビニで大量に酒を買ってるなんてちょっと想像すれば訳ありだということがわかる。
どうしよう。
酒で回らない頭を必死に回転させる。
しかし何も言い訳が出なかった。
言葉に詰まっていると、何かを感じ取ったのか神林は私の手から籠を取り上げた。
「え、ちょっと」
「他に買うものないか?」
「え!? あ、はい。え?」
神林はスタスタと自分の籠と共に私の籠もレジへ持って行く。



