「明日? え? 何の日だっけ?」
頭をかきながらキョロキョロして焦る優斗は明日が何の日か思い出せないでいた。
六年もいて、忘れるのか。
何のための六年だったんだ。
こんなにも、こんなにも情けない男と付き合っていたのか。
浮気したらあっさりと彼女の誕生日は忘れるんだな。
いや。本当はどこかで気が付いていたのに見て見ぬふりをしてきたのは私だ。
最近の優斗はあれこれ理由をつけては明らかに私を避けていた。
もしかして、と思いながらもそれを考えないように知らんぷりしていたのは私だ。
この結末を招いたのは私でもある。
なんて、馬鹿馬鹿しい結末なんだろう。
「もういい。さよなら」
私は優斗の顔を見ずに部屋を後にした。
泣いたりヒステリックになんてならない。ただ、優斗にも自分にも失望した。
別に期待した訳じゃないけど、もちろん優斗が追ってくる訳もなく、夜道には私のヒールの音がカツカツと虚しく響いた。



