花色の月


「あたしが持って那月さんが少しでも軽くなるなら、頂戴?背負わせて」



ねぇ、那月さん。

あたしは、いつも那月さんに助けて貰ってるの。

隅っこで泣いてた小さなあたしも丸ごと那月さんが抱き締めてくれるから、あたしは頑張ろうって思えるの。

だから、泣いてる小さな那月さんも抱き締めさせて?







「……言葉にするって……難しいですね。
十夢や師匠にすら、話した事無いですから……」


しばらく揺れる瞳で口を一文字に結んでいた那月さんが、困ったように首を傾げた。



「無理に話してって言う訳じゃないよ?」


サラサラと指先を滑る那月さんの髪を、ちゃんと顔が見えるように耳に掛ける。

瞳を見つめていると、こんなに表情豊かな人なのに。

人前に出ると、何もかも覆い隠すようにどこか諦めを含んだ微笑み方をする。


でも、あたしの前ではけっこう素顔を見せてくれてると思ってるんだけど……勘違いじゃないよね?

今は、それ以上望まないから。




「那月さん、お風呂入ろっか?背中流してあげる」



思い付いた時に、直ぐ入れるのは温泉の特権だよね。

月守旅館と同じお湯だけど、ここのお風呂のが少し濃いような気がする。



「……花乃?」



サッサと立ち上がったあたしを、珍しく見上げる那月さんが何だか可愛い。



「今直ぐ話してなんて言わないから、いつか話す相手はあたしね?予約しておくから」