花色の月


二人で玄米茶を飲みながら、座布団の上で毛繕いをする楓ちゃんを眺めた。

コトンと湯呑みを置いた那月さんが、黙ったままあたしを引き寄せる。



「……聞かないんですか?」



耳元で囁かれる声は、いつもどおり甘いけれどほんの微かに震えていた気がした。



「聞かれたい?」


「………」


「別に、那月さんの事が知りたくない訳じゃないんだよ?でも無理に聞き出したくもないの」



肩に顔を埋める那月さんの表情は、あたしからは見えない。

でも、微かに吐いた吐息が安心したと言ってるみたいだった。


そっと、いつも那月さんがやってくれる様に背中を撫でた。


少しでも、心の重みが軽くなるように。
少しでも、心の傷が癒えるように。


心の中で祈るように想いながら、いつもより頼りなく見える那月さんを抱き締めた。




「……自分が嫌になります」


「どうして?」


「……羨ましいと……思ってしまったんです。
私の両親は生きてます。ですが……ここに来て以来事務的なやり取り以外、会うどころか手紙のやり取りもしていません」



母親が恋しい歳でも無いんですけどね、と自嘲するように呟く那月さんの心の痛みは、少しは理解出来ると思う。

親に愛されて幼少期を過ごさなかった人は、いくつになっても胸の中に愛されたいと願う子どもが居る。


あたしの場合は、早くに母を亡くし父親には捨てられたと思っていた。

……実際は、違っていたんだけどね……

お父さんも愛してくれてたし
お母さんは……会いに来てくれた。




「……重たい物を、花乃にも背負わせてしまうかも知れないんです……」