花色の月


那月さんは、ご両親の話を殆どしない。

馬が合わなかったんです、と前に聞いたくらいだ。

あとは、知花さまに少し聞いただけ。



話してくれない事を、寂しいと思ってしまう気持ちもあるけれど、それよりも那月さんの傷を抉りたくなかった。


いつか、那月さんから話してくれるのを待とう。

いつも、那月さんがあたしを待ってくれるように。




「那月さん、帰ろう?」


「えぇ」



短く答えた那月さんは、いつもの柔らかな微笑みを浮かべてあたしの手を引いて歩き出した。

でも、その微笑みの裏に切なげな色を隠したようにも見える。

黙ったまま手を繋いで如月窯まで歩いた。

嫌な沈黙じゃなかったけれど、やっぱりどこか切ない沈黙。



「……花乃も飲みますか?」


「うん、今日はなに?」


「玄米茶ですよ。これは出来が良かったやつですね」



えっ!?那月さんってお茶も作るの?



「……那月さんって、無人島でも立派に生きていけるね」


「そうですか?木片を擦って火を付けるのはなかなか骨ですけどね」



それもやった事があるのね……

あたし、無人島に行くなら何を持ってく?って質問に、那月さんって解答する事にするわ。