花色の月


「お母さん……」



それ以上は声が喉に詰まったみたいになって、涙ばかりが溢れた。

木の下で微笑むのは、朧気に淡い光を放つお母さんだった。

お気に入りの着物を着て、フワッと手を振ると光が一筋空を昇った。




「……花乃」


「お、お母さん……だったよね?」



頷いてくれる那月さんにしがみついて、子どもの様に泣いてしまった。

会いたくて、会いたくて、なんど月に祈ったのか分からない。

お母さんを見る事が出来たのは、たぶん那月さんと手を繋いでいたからだ。



お母さん………

お母さんがこのタイミングで現れてくれたのは、歌って良いって言ってもらえたようで、決意しても胸の底に燻っていたわだかまりが溶けていく。




「花乃、ますます雪乃さん似てきましたね」


「に……似てる?」


「花乃のが可愛いですけどね?まるで姉妹みたいですね」




お母さんが昇ったお月さまを見上げた。

お母さん……ちゃんと居るもん。


あの、寂しげな瞳の人に言ってやりたくなったけど、これはあたしと那月さんだけが知っていれば良いことだと思い直した。




「ねぇ、那月さんは嫌じゃなかったの?あの人は、見える事を否定してたのに……」


「まぁ、克彦は知りませんしね。それにあれが普通と言えば普通ですし」



普通……

その言葉を言う時に、那月さんが少しだけ見せたのは、切なく深い傷の片鱗。