花色の月


「那月さんは……歌った方がいいと思う?」


「さぁ、どうでしょう。
決めるのは花乃ですけど、歌ったからと言って雪乃さんは悲しんだりしないと思いますよ」



那月さんは分かってるんだ。

那月さんの言葉で決めてしまおっかと思ったあたしを。

久しぶりに那月さんに会えたのに、今日はなんだか疲れちゃった。



「花乃、疲れてる時に結論を出す事はないですよ」



ギュッと那月さんに抱き付いた。


あの人の言った事は許せないけれど、でもあたしの歌を聴いて感動してくれた事は嬉しい。

どうしたら良いのかな……



あたしがステージで歌った最後のコンサート。

沢山の実力ある人に埋もれて、あたしなんかを心に止めてくれてる人がいるなんて思わなかった。



「花乃のステージ衣装ってどんなだったんですか?」


「……言わない」



似合ってなかったもん。

あれを見られたのかぁ……
化粧もケバかったしなぁ……
胸が無いのにあのドレスは借り物とは言え……




「なるほど、胸元を強調したドレスだったんですね」


「……頭ん中覗かないでください」


「顔と視線を見ただけですよ?」




……もういいもん。

くるんと向きを変えて、開いていた襖から入ってきた楓ちゃんを撫でた。