花色の月


那月さんが、優しく頭を撫でてくれるから、ゆっくりと絡んだ糸がほどけてきた。



「混乱しましたか?」


「うん……それよりも、なんでそこまで那月さんが詳しいのかって事が気になるんだけど…」



だって、かなり深い所まで突っ込んでるよね?

下から那月さんを見上げると、那月さんは自分の髪をかき上げて少し視線をさ迷わした。

これは、那月さんが困った時の仕草だね。



「引かないで下さいね?……克彦のお父さんご本人から聞きました」



………?

えっと、ご本人?
亡くなってからの事を、知ってるって事は……



「えっ?幽霊?」


「まぁ……そう言った感じでしょうね。
なんで、克彦も知らない事も……聞いちゃったんですよね」



それは、何やら複雑な。



「……気味悪くなりましたか?」


「ううん?でも、あの反応をする人には言えないよねぇ」


「そうなんです……伝える事も出来ずに何年も経ってますからねぇ」



立ちっぱなしだった事に気が付いて、二人して畳の上に座ると何だか先程の怒りが何処かへ行ってしまった事に気が付いた。

だって……頭の中がそれどころじゃ無いんだもん。



「久美子さんは、その当時まだ若くて克也さんといくらでも子どもを作れたのに、作らなかったんです。

子どもは克彦だけで良いって言って愛情たっぷりに育ててくれた事に、少しでも恩返しがしたかったんです。

それが今回の結婚式って形になったんですよ」




でも……そこであたしが歌う事に、あんなに固執する意味が分かんないんだけど。


首を捻るあたしを、また抱き締めるように引き寄せて那月さんは続けた。