花色の月


「嘘、ですか?」


「うん……自分にも嘘ついてた。本当は嫌だったの取られたって思ったの……」



でも、あたしは大丈夫だって自分に嘘をついていた。

どこかでそれが引っ掛かっていて、お父さんと久美子さんを祝福する為に歌う事に、抵抗があったんだ。




「……そうですね」


「あたし……やっぱり歌えない。お母さんが、とかじゃなくて………あたしが許せないって思ってるから」



那月さんは知ってたんだね。

少しも驚かないで、あたしの髪を撫でながら聞いてくれる。



「花乃、いい子ちゃんになる必要はありませんよ?嫌だと思って当たり前なんですから」


「……幸せを祈ってあげられない」


「そんなに自分を責めないで下さい。今日の事は克彦が全面的に悪いんですし」




冷たい瞳が怖かった。

伊達眼鏡のレンズでも隠せないくらい、さむくて……



「寂しそうだった…」


「そうですね。
花乃、克彦を許せとは言いません。ですけど、少し話を聞いてくれますか?」



こくんと頷くと、何故か那月さんも少し寂しそうな視線で呟いた。



「私も……十夢も、桜介も、どうも親との縁が薄いと言いますか、複雑な家庭環境ってやつなんですよね」



それは、あたしも同じだ。



「類は友をって言うんでしょうか。そう言うもの同士集まってしまうものみたいですね。

……克彦の実のご両親は、二人共もう無くなってるんです」



えっ……?

じゃあ、久美子さんは?

克彦さんは、 久美子さんの連れ子だって言ってたよね?