「花乃、言ってくれないと分かりませんよ?」


艶っぽく微笑む那月さんは、あたしの髪をそっと撫でて先を促してみせた。


「那月さんの隣に……」


「隣に?」


うぅ……那月さんが何だか楽しそうに見えるのは気のせいじゃないよね?

甘い甘いくちなしの香りと、那月さんの微笑みは、いつでもあたしを酔わせてしまう。


あたしの頭を撫でている那月さんの手を、ギュッと握った。




「嫌でなかったら……ずっと居させて下さい」


「フフッ、先に隣に居させてくれって言ったのは私ですよ?花乃が居れば、私は他に何も望みません」



甘く甘く囁く那月さんの手に、自分の頬を寄せた。

さらりと乾いた手の平には、いくつかの固いたこがある。

毎日している薪割りの斧のたこらしいけど、綺麗な顔と働き者の手のギャップがまた素敵なんだと思う。




「花乃、ゆっくり休んで早く良くなって下さいね」



薬が効いてきたのか急に瞼が重くなって、那月さんに抱き締めて貰いながら、ゆるゆると眠りの世界に誘われていった。