花色の月


「どうしましたか?」


「フフッ、那月さんが敬語じゃないの初めて聞いたなぁって」


「あっ……あぁ…そうですよね」


那月さんは、何故か決まり悪げに髪をかき上げた。

そう言えば、なんで敬語なんだろう?

ものすごく今更な疑問を、そのまま口に出していた。




「那月さんは、なんでいつもは敬語なの?」


「比較的冷静でいられるからって所でしょうか。
ポーカーフェイスも回りの"気"に引っ張られないように気を付けてるせいで、癖になってしまいました」


「そっか……でも、那月さんのポーカーフェイスは少し見抜けるかも」


「それは嬉しいですね。花乃に分かって貰えたら、他は多くを望みません」



たぶん、那月さんなりの心の守り方だったんだと思う。

一歩引いて世の中を見ているような、少し人間離れした雰囲気はそこから来ているんだろう。



帰りの電車の中で、那月さんにもたれ掛かるとこちらを見下ろした那月さんの瞳は、何だか嬉しそうにキラキラと輝いていた。


「あっ……」


「どうかしましたか?」


「くちなしの…香水」


「あぁ、すっかり忘れてましたね。
また来ましょう」


お腹は減っちゃってるし、くちなしの香水の事は忘れちゃってたけど、次のデートの約束も出来たみたいだし、それはそれでいいのかな?