First love~最初で最後に愛した君へ~

ぷくっと頬を膨らませて拗ねるわたし。


それを見て、あろうことか彼は吹きだした。



「……何が面白いのよー」



口元を片手で覆い、俯いて肩を震わせる彼。


笑いたきゃ笑えばいいじゃん!


堪えられてる方が余計に辛い!


じとっと彼を睨みつけると彼は、「ごめんごめん」と言って片手をあげて真面目そうな顔をする。


……でもね、あなた。思いっきり口元緩んじゃってますよ。


肩震えちゃってますよ。




「もう笑うんだったら笑っていいよ……」

「や、もう大丈夫」

「あ、そう」



冷めるのが早いこと。


真面目な顔をした彼は、ふと思い出したようにわたしに視線を向ける。


そして不意に、首をかしげた。




「そういやさ、お前名前は?」

「え?」

「いや、だから名前。俺らお互いに名前まだ知らないよな?」

「あぁ!」



そう言えば、そうだった。


わたしは手を叩くと、彼と向き合うように移動してにっこり微笑む。


若干顔をしかめられたのは気にしないでおくとしよう。




「わたし、朝霧(アサギリ)陽花。よろしく!」

「俺は、日向(ヒナタ)。笹原(ササハラ)日向」



満面の笑みで手を差し出すと、笹原くんはぎこちない仕草で手を握る。


その行動に、わたしは少し驚いて思わず笹原くんを見上げた。


てっきり、冷たく跳ねのけられるのかと思ったんだけど……。


わたしの視線を受けて、笹原くんは渋面を作ってわたしを見下ろした。


その頬は少しだけ赤い。



「……なんだよ?」

「べっつにー!」



わたしはわざとらしく顔を背ける。


自分でもわかるぐらい、顔は二ヤけていた。


だって、仕方ないじゃん? こんな可愛い顔されたら、二ヤけずにはいられないよ。


口元を押さえて、わたしは何となく視界に入った空を見上げた。


――楽しい半年になりそうな予感。


何故だかその予感は外れないような気がした。