どこかの歌手と似ているのだろうか。 女優や声優だろうか。 ……萌に似ている気がした。 僕は黙って美声を聴き続けた。 長い様で短い歌姫の時間が終わってしまった。 店内が少しだけ明るくなり、歌姫が各テーブルを回り始めた。 「ぉお〜!来た来たッ」 火茂瀬が喜びの声を上げる。 紫色のドレスに身を包んだ美白の歌姫は、首や手首の派手なアクセサリーを揺らしながら僕たちの座るカウンターにやって来た。 「初めましてですね。私はここで歌っているヒツキです。お2人のお名前、教えてくださる?」