竹林の中の離れの茶室。
母が茶を立ててている。
増す緊張感を静めようと、立ち上がる湯気と交互に母の姿を見つめた。
『少し、話をしましょうか』
さっき、お客様たちをお見送りしたあと、そう母に声をかけられた。
先ほどの、次期家元候補の話に違いない。
父が私を次期家元候補者に加えると宣言されたことについて、だ。
茶を立てる母の所作は凛と美しく、まだまだ敵わないと思った。
母が、私の前に茶を置く。
母とこんな風に改まったカタチで向き合うなんて、今まであったかしら。
思わず身構える。
「お家元が、おっしゃっていました」
と前置きして、母は凛とした佇まいを崩さないまま語り出した。
「琴湖を今まで次期家元にと推さなかったのは、琴湖の身体が弱かったから、だけではないと。
“琴湖は、優秀だ。
だが、人前に立っていく度量があるとは思えなかった。
性質的に家を継ぐには不向きだと。
だけど、違った。
私たちは、誤解していたようだ。
最近の琴湖は、とても強くなった”
――そう、家元はおっしゃっていました」
母が茶を立ててている。
増す緊張感を静めようと、立ち上がる湯気と交互に母の姿を見つめた。
『少し、話をしましょうか』
さっき、お客様たちをお見送りしたあと、そう母に声をかけられた。
先ほどの、次期家元候補の話に違いない。
父が私を次期家元候補者に加えると宣言されたことについて、だ。
茶を立てる母の所作は凛と美しく、まだまだ敵わないと思った。
母が、私の前に茶を置く。
母とこんな風に改まったカタチで向き合うなんて、今まであったかしら。
思わず身構える。
「お家元が、おっしゃっていました」
と前置きして、母は凛とした佇まいを崩さないまま語り出した。
「琴湖を今まで次期家元にと推さなかったのは、琴湖の身体が弱かったから、だけではないと。
“琴湖は、優秀だ。
だが、人前に立っていく度量があるとは思えなかった。
性質的に家を継ぐには不向きだと。
だけど、違った。
私たちは、誤解していたようだ。
最近の琴湖は、とても強くなった”
――そう、家元はおっしゃっていました」