「本当は隔離施設に移って貰いたいぐらいですが、通院で結構です。普通の生活をして頂けます」

「本当ですか!」

 美咲が美佳の肩から、頬を寄せる。

「じゃあ、学校に行っていいの?」

「ええ、勿論。但し、何か異常があれば、隔離施設に移って頂きます。そうならないように、私も努力します」

 越石は美佳を退室させ、美咲に向かって話す。

「まだまだ分からない事が多いのですが、分かってきた事実もあります。ですから、完治する可能性だって否定しません。希望を持たせるような話ではなく、これは研究の進捗なのですよ」

「治るんですか?」

「諦める必要はありません。但し、娘さんが危険な触媒になっていることは認知しておいて下さい」

「認知?」

「研究を進める事を条件に、上の反対を押し切って、通院を認めました。それはつまり、美佳ちゃんが突然変異し、一般人へ危害を加えることへの懸念なんです」

「美佳は決してそんなことはしません」

「研究の進捗と、侵蝕のどちらが早いか。今は薬で時間を稼いでいる状態といえます」

 越石は美咲に付け加える。

「いいですか。覚悟は必要なのです。何かあれば、娘さんとはいえ、然るべき処置を施すしかないのです」