失踪者を民代が食べてしまったのは、紛れのない事実のようだった。


 民代の根は地を這い、地域一帯まで広がった。

 苦しさがやがて人としての意識を失い、無意識のうちに不足した養分を吸収するために、二人の犠牲者を取り込んでしまったのだそうだ。

 だから、何も覚えてはいない。

 言えることは、もう、この世に二人はいないということだけだ。

 体には充足感があった。
 後になって、それが人間だと知り、養分を吸った感覚に苛なまれたが、その時はそのまま、単純に喜びに繋がっていたのだ。

 もはや自分は、心さえも失われて行く。


 私の一人娘、金山ゆかりも涼城町子も、民代は土に還ったと考えることにしているそうだ。


「罪も無い人間を、犠牲にして、土に還ったのだと? これでは余りにも自分勝手が過ぎませんか?」

 そう、私が質問すると、「何が罪なんですかね? 定義は人それぞれではないですか?」と、答えが返ってきた。


 何が罪なんですかね? 定義は人それぞれではないですか?

 何が罪なんですかね? 定義は人それぞれではないですか?


 何が罪で、何が定義なのか……。


 私の頭の中で、その言葉がグルグルと駆け回る。