「この子は金山ゆかりちゃん、と言いましてね。去年の暮れ、小学二年生の時に学校から戻らず、そのまま失踪してしもうたんです。ちょうど誕生日やったそうですわ。今でもお母さんがそりゃあもう、必死になって探しとります。確かテレビの人探し番組とかにも、出演しとりましたな」

 宮坂がチラシを入れ替える。

「それから、こちらは涼城町子(すずしろまちこ)さん。八十一歳のお婆ちゃんなんですけど、独り暮らしでしてね。今年の春先に買い物に出掛けて、それっきりなんですわ。どこへ行ったんだか、皆目検討がつかんのですよ」

「そんなことが……」

 宮坂の話では、近辺で失踪が相次いでいる。美佳の事を思うと、今まで知らなかった自分に腹が立った。

「ところで、フリーの記者がこの件で聞き込みに来てはいませんか?」

「フリーの記者さん? 来てませんが」

「その記者っちゅうのが、さっき言った金山ゆかりの母親でしてね。警察だけには任せておけないと色々と仰られて、独自に調べられとるようなのですが……」

「金山って言うと、あのテレビに出てた金山静江かしら?」

 美咲も何度かは見たことがある。同じ母親として共感できる部分も多いが、そうでないところもある。

「そう! そうなんです。よくご存じで。私なんかその辺が疎くて、困っとります。……しかしまあ、お宅は引っ越されてそんなに経っておられないようですから、このような失踪騒ぎ自体、お知りにならないのも無理はないのですが」

「いえ……」

 美咲が生返事をすると、宮坂は適当にチラシを四つに折って、無理やりポケットに突っ込んだ。

「すいません。不安を煽るつもりは、毛頭なかったのですが、ただ、お気を付け下さいね」

「お知らせ下さり、ありがとうございます」