「信ちゃん、あれ見て」
翌日の土曜日、会社が休みだった信一郎がのんびり新聞を読んでいると、窓を覗いた美咲が声をあげた。
公園を囲むように、石で出来たような、白い足付きのプランターが設置されていた。
もともとあった公園の花壇の上に、プランターが置かれて、四つの足が土に沈んでいる。
「何も花壇の上に置くことないのになあ。まあ、花壇と言っても、大して植えられているものも無かったが」
「ウチの柵沿いにも並べてあるわ」
「あれ、見てみなよ。このプランター、市からの補助金が出てる見たいだよ。ほら、ここに書いてある」
プランターの側面に、黒字で市役所の名前が見える。白地に黒文字というだけで、くっきりとよく目立っていた。
「本当ね。管理を地域で代行しているから、補助金が出るのね。でも、この手の申請には地域住民の賛同の証として、署名がいる筈よ」
「詳しいな。会社勤めの時、ずっと総務にいたんだっけ?」
美咲は信一郎と同じ会社の総務部にいた。
総務関係の書類を提出する度に、美咲からあれこれ指摘され、信一郎が出す前から相談するようになった。
美咲としても、いつしか放っておけない存在になり、次第に親密になった。
信一郎は思った。人の縁とは奇妙なものだと。誰かが誰かの世話を焼く、そんなところから、始まるのかもしれない。
その総務関係の仕事で、美咲が役所に出入りする機会は多かった。
「署名なんかしてないだろ?」
「回覧板すらないのよ」
「うーん。今は誰も手入れしていない状態だから、白河さんがやってくれるということかな?」
「でも……、相談ぐらいあってもいいんじゃない?」
美咲は眉を下げる。
「猫の件以来、ピリピリし過ぎだよ」
「そう……ね。気を付けるわ」
翌日の土曜日、会社が休みだった信一郎がのんびり新聞を読んでいると、窓を覗いた美咲が声をあげた。
公園を囲むように、石で出来たような、白い足付きのプランターが設置されていた。
もともとあった公園の花壇の上に、プランターが置かれて、四つの足が土に沈んでいる。
「何も花壇の上に置くことないのになあ。まあ、花壇と言っても、大して植えられているものも無かったが」
「ウチの柵沿いにも並べてあるわ」
「あれ、見てみなよ。このプランター、市からの補助金が出てる見たいだよ。ほら、ここに書いてある」
プランターの側面に、黒字で市役所の名前が見える。白地に黒文字というだけで、くっきりとよく目立っていた。
「本当ね。管理を地域で代行しているから、補助金が出るのね。でも、この手の申請には地域住民の賛同の証として、署名がいる筈よ」
「詳しいな。会社勤めの時、ずっと総務にいたんだっけ?」
美咲は信一郎と同じ会社の総務部にいた。
総務関係の書類を提出する度に、美咲からあれこれ指摘され、信一郎が出す前から相談するようになった。
美咲としても、いつしか放っておけない存在になり、次第に親密になった。
信一郎は思った。人の縁とは奇妙なものだと。誰かが誰かの世話を焼く、そんなところから、始まるのかもしれない。
その総務関係の仕事で、美咲が役所に出入りする機会は多かった。
「署名なんかしてないだろ?」
「回覧板すらないのよ」
「うーん。今は誰も手入れしていない状態だから、白河さんがやってくれるということかな?」
「でも……、相談ぐらいあってもいいんじゃない?」
美咲は眉を下げる。
「猫の件以来、ピリピリし過ぎだよ」
「そう……ね。気を付けるわ」



