「でも、また捨てられたら、お役所に怒こられるのは私なんだし……」

「簡単な立て札を貼っておこうよ。印刷して、透明のプラスチックケースに入れて。僕が作っておくよ。市役所に言われたゴミ収集の曜日を教えてくれないか?」

「信ちゃんが作ってくれるんだ」

「美咲が頑張ったから、次は僕の番だろ?」

 信一郎は夕食後、早速自宅のパーソナルコンピュータで作成し、プリントアウトした。

 手馴れたものだった。収集の曜日、種類など、必要な情報を盛り込まれ、そして簡潔明瞭な表が出来上がった。

「信ちゃん、大したものね」

「会社で培った技能だよ。如何にわかり易く、シンプルに作成するかが大切なんだ」

「感心ね」

「地味なんだけどね」

 美咲は信一郎が会社から色々と言われたとしても、結局のところ、重宝されているような気がする。

 OL時代を経験した事のある美咲には、何気ない特技こそが、会社の仕事を支えているものだと、知っていたからである。

「まさかこの期に及んで妻に褒められるとは、思っても見なかったよ」

「嬉しいでしょ?」

「そうだな。素直に嬉しいな」

 信一郎は出来た曜日表を美咲に渡した。

「後はプラスチックケースを買って中に入れて、壁に貼り付けようよ」

「ケースは私が買っておくわ。後は任せて」

 美咲の動きは早かった。その日のうちに適当なケースを見付けてきて購入し、プラスチック看板を仕上げた。