「一回分、ゴミの日が飛ぶ訳ね」

 生ゴミが気になる。臭わないか心配だ。

「すみません。御迷惑をお掛けします。我々だけの車両ならすぐに対応できるのですが、複数の業者で対応していますので」

 真山は美咲の表情を読み取ったようだった。よく見ると、作業服の下に、藍色の地味なネクタイが見える。

 どうやら市が委託している外部委託業社の社員ではなく、この作業員は本物の役人のようだ。市のマークの入ったピンバッヂが見え隠れしていた。

 へえー、と美咲は思った。

 役所が業者に任せっきりにしていないんだと分かったことで、待ち時間の十五分に溜った美咲のストレスは、取り合えず消えた。

「申し訳ありませんが、宜しく御理解をお願いします」

 役人は頭を下げた。

「分かりました。大丈夫です。それでは来週から、よろしくお願いします」



 ゴミ置き場の確認は終わった。

 そして同時に、ゴミ当番も決まった。


「まあ、使うのも汚すのも私たちの家族だけだから、きれいに使えば、大丈夫だけど」

 美咲がゴミ収集車を見送りながら発した、独り言だった。