「とても大きな庭ですね。圧倒されます」

 信一郎は努力しているが、自分の顔がこわばっていることぐらいは分かっている。

「かなりお好きなんですね。ガーデニング」

「ははは。そうですね。ただの土いじりなんですが、今はそんな風にカタカナで言うんですな」

 男は特上蕎麦セットを傍らに置くと、改めて笑顔を作った。

「白河です。宜しく」

 急に改められて、信一郎の方が面食らった。

「妻と二人で住んでいましてね。いま、ちょうど、出掛けているんですよ」

「そうなんですか」

 白河は美佳に目を落とすと、自分も膝を折って、顔を近付けた。

「お嬢さんは、小学生かな?」

「この春で、小学二年生になったんです」

 モジモジしていた美佳に代わって、美咲が後ろから答えた。
 明からさまに、美佳は嫌がっている。そんな娘に、美咲が気を使っているようだった。

「そうですか。二年生ですか。可愛らしいねぇ」

 白河はそう言いながら立ち上がる。

「花は好きかい? 可愛い花がここには沢山あるよ。欲しければ、何本かあげるよ」

 確かに色取り取りに可愛い花が、あるにはある。
 しかし、異常に密集しているのだ。まるでそれは、植物の胎内のようだ。