「アンタは…バカだ。」
渡は再び羅衣の腕を掴んで。
彼女の身体を引き寄せると……
そっと唇に…
キスをする。
「………………。」
羅衣は驚きの余り、棒立ちになっていて……。
「目くらいつむれ。」
渡にそう言われても。
ただじっと……
彼の顔を見つめていた。
「もう一回する。」
一方の渡も、じっと彼女の瞳を見つめて。
まるで……どちらが先に逸らすのか、根競べをするかのように…
互いの瞳の中へと…吸い込まれていく。
唇が触れる寸前に、
ようやく…羅衣が目を閉じる。
それを確認した渡もまた、そっと目を閉じて。
羅衣の長い髪を、耳にかけながら……
キスをした。


