不意に……、羅衣は走り出す。
足音に気づいた渡はその動きを止めるけれど。
羅衣は……
止まらない。
驚く渡の手元から、素早くボールを奪いとって。
いつか渡がしたみたいに……
左手をそっと添えて。
打ち放ったボールは…
高く、
高く、
綺麗な放物線を描いて……
ゴールへと吸い込まれていく。
「練習しないと…できないもんだね。」
羅衣はボールを拾い上げて、渡に…近づいていく。
「……何しに来たの。」
「…アンタを…見に。」
「……タカハシばっか見てたじゃん。」
「…………。何で知ってるのよ。」
「何でって。………。…………?…………さあ?」
「あっそ。」
「ああいう風に露骨に見るとかって…イラつくし。」
「こっそりならいいんだ?」
「………。…キモい。」
「アンタねぇ、何が言いたいのよ。」
「え。アンタがムカつくってこと。」
「はあ~?!」
「俺にはいいとかって言いながら、なにちゃっかりタカハシと朝練してんだよ。さっきのも…その練習の賜物?」
「……。タカハシくんとは偶然成り行きでそうなっただけで…。違うよ。あれは私が勝手に練習したんだから。」
「…………。」
「シュート…、あまりにも綺麗だったから。アンタをイメージして…覚えた。」
「…………。お前さ…、タカハシに惚れた?あいつ…すげーいい奴だし。」
「何でそうなるの。」
「似合ってる。可愛い子ザルカップルって感じ。」
「猿じゃない。それに。………私は……。」
「…………。」
「……私は………!」
「…………。今日はうるさいの来たし…、やっぱ練習やめよ。」
「……は?」
「そのボール、片付けておいて。」
「………ちょっ……!」
「…………。俺は。アンタらが上手く行けばいいと…思ってる。」
「…………!」
「よーやく直ったみたいでよかったじゃん。…男嫌い。」
「……え?」
「タカハシなら大丈夫。上手くやれるよ。…じゃーな。」
渡は羅衣の側を無言で通過すると……、
タオルを手に取って、歩き出す。


