ロール状に巻かれたマットをバタンバタンと音を立てながら…運ぶ。
一方、半面コートの反対側では、バスケ部員達が顧問に挨拶をした後……。
ウォーニングアップを初めていた。
羅衣達は体育倉庫に向かい、今度は…二人掛かりで『跳馬』を運ぶ。
バスケ部からは…彼等独特の掛け声が…聞こえてきた。
コートの端から端までを行ったり来たり…している。
1年生がセーフティーマットとロイター板を運び、それから、羅衣の指示によって…跳馬の隣りに跳び箱を8段の高さで設置した。
バッシュが床に擦れる音が…心地よく響いていた。
マットの上に学年毎に並び、一斉に柔軟を始める。
「……………。」
羅衣はようやくそこで……
バスケ部へと目をやった。
ウォーニングアップを終え、二人一組でパス出しの練習をしている人。
それから、1年生であろうか……。
右手、左手、とボールを持つ手をかえながら、低い姿勢でひたすらドリブルをする人達……。
ワタリはー…、と、つい…彼を探してしまう。
黒髪の長身。
広い背中。
ハーフパンツからスラリと伸びる、筋肉質な…ふくらはぎ。
後ろ姿でさえ……
簡単に見つけることができる。
「……あ。」
渡とパス出しの練習をしている相手が、小さく手を振っている。
一番と遠方にはいるけれど、あの無邪気な可愛いらしさは……
間違いなく、タカハシであろう。
羅衣の脳内には、ポポポンと花が咲く。
羅衣もまた、手元で小さく…手を振り返した。
それを受けたタカハシのにこにこオーラがこちらにも伝わって来たところで。
「…………ぉお…?」
不意に……
黒髪くんが……こっちへと振り返る。
しかも。
ものすご~く、睨みつけながら………。
羅衣は慌てて、ゴメンとジェスチャーするけれど。
あっさりと…視線が逸らされる。
「練習中だもん、当たり前……か。」


