「……お、オハヨー……。」
朝から汗を流し、ぜーぜーと息をはきながら教室へと入って来た…羅衣。
「…オハヨー、何、寝坊?」
民子がくすくすと笑いながら…羅衣の前の席へと腰かけた。
「……ハ?え、体操の?」
「ううん~バスケの。」
「燃えてるねぇ。で?コーチは渡くんなんでしょ。どう?やっぱりスパルタ?」
民子はわくわくしながら、次の言葉を…待っていた。
「ううん。タカハシくん。」
「……………。え。誰だって?」
「だから…、タカハシくん。」
「もしもし…?全国に何万人のタカハシさんがいると思ってんの。」
「………。ワタリの友達でバスケ部の…タカハシ君。」
「ああ、あの可愛い感じの……。……って、………はぁ?何がどうなってそうなった!」
「……?たまたま知り合って、成り行きで?」
「………。アンタ、行きずりの男とそんなことする子じゃ…。」
民子はハンドタオルで涙を拭うフリをする。
「人聞き悪いな。なんていうか…、気が合うんだよね、タカハシくん。話聞いてくれるし、ちゃんと答えも返してくれる。……うん、癒し系…?」
「……あ~…確かに。アンタ達が一緒にいるとなんだかちんまりして微笑ましい……、て、まさか他の男の名前が出てくるなんて……!!どーりで朝から雨脚が強いハズだわ。」
「梅雨だからね。」
「……ちょっ…それ、渡くんは知ってるの?」
「……さあ…。でも知ってるんじゃない?友達だし。」
「いやいや…それ、マズイっしょ。」
「何で?」
「折角いい感じだったのに他の男と仲良くなったら…」
「…………なったら?」
「……………。……わからん。あの王子のことだけは本気でわからん。」
「……だよね。だからさ…、ちょっと修行中なのよ。」
「…と、いいますと…?」
「……鼻を明かしてやりたいじゃない?」
「……………。」
「とにかく…、少し冷静になって考えたんだ。」
「…………。」
「渡を……振り向かせる方法を。」
「………!ま…、マジで!」
民子は驚きの余り……
椅子から立ち上がった。


