「……帰ろっか、ワタリ。」
「………ん。」
「体育館の鍵閉めるんだよね。」
「うん。」
彼等は鞄を持って……
出口まで歩く。
パチ…
パチ……
一個ずつ…
ライトが消えていく。
「……。ちょっとホラーだよね。静かすぎて…怖っ」
ケタケタと笑いながら……
最後のライトを消す。
辺りは………
真っ暗だ。
「…よーし、行こ…わぷっ!!」
踏み出した第一歩で、顔面を…何かにぶつける。
「……………!」
さっきと同じ……
汗の香りがする。
「………ワタリ?ごめんごめん。」
羅衣はパッと体を離すけれど。
「……え……?」
腰をぐいっとひかれて。
また…元の位置へと戻されていた。
「………ワタリ…?何……?」
「…………。…別に。」
明かに今……、
羅衣は渡の腕の中へといる。
頭の上に、渡の吐息が触れる。
「……汗くさい。」
「ちょっ…、匂わないでくれるかな。」
「でも、シャンプーいい匂い。」
「はあ?!」
彼が息をつく度に、
ぞくりと…全身に何かがほと走った。
「……離して。」
「…………。」
「絶対おかしいでしょ、コレ。」
「……ぷにぷにしてて気持ちいい。」
「そんな理由で抱かないでくれるかなあ~?」
自分で言った『抱く』という言葉に。
羅衣は……フリーズする。
渡に…抱きしめられている。
そのことを、改めて…自覚したのだから。
「どんな理由ならいい?」
「ええっ…?!いや、あの~……、友達同士がすることではないかと。」
「……俺とアンタって友達なんだ?」
ぎゅむっと…脇腹を掴まれる。
「うぎゃっ…!なにすん…」
羅衣を抱く力が……
更に強くなる。
「…ワタリ……?痛いよ。」
「したいと思ったから…した。それならいい?」
「………。自由すぎだよ、それ。」
けれど……離すこともできない。


