彼女はゴール下のボールを拾い上げて…。
渡へと…パスを出す。
「…ノーコン！」
羅衣のパスは。
渡がいた場所よりもずっとゴールに近い所でワンバウンドして……、
だけど、
渡の大きな右手が……
それをスッと奪う。
「………ぅわ……」
渡はふわり、と宙へと跳び上がると…
ボールを置いてくるかのように、そっと…手放した。
ゴールに吸い込まれたボールが、コロコロと……
羅衣の足元へと頃がってくる。
「………今の……いい！！私もしたい。」
羅衣の目は……
キラッキラ！
「無謀だろ。」
「でも、できたらかっこ良くない？」
「……。かっこよかった？」
「うん！」
「…………。かっこよかった？」
「うん！！」
「……。サムイ…。」
「ちょっ…、失礼だよねその反応。」
「や、余りにも素直すぎて怖い。」
「……………。」
「アンタにも女子らしいミーハー心があったんだな。」
「………。女子ですから。」
しまった…、と、
羅衣は…思う。
これだから、最近可笑しいと言うのだ。
渡の行動に、いちいちドキドキとしてしまうことは。
彼女が長年演じてきた化けの皮を…剥がされたかのようで…、
ペースを…思いきり乱される。
渡は羅衣の足元に転がるボールを、片手で拾いあげる。
「………。…一ノ瀬？」
「……え…？」
「ぼうっとしてる。」
「あ……、ごめん。」
渡が………近い。
「………………。」
近づかないで、と……
言われたばかりなのに。
「次…、ドリブル…教えて。」
「ああ。」
彼女はボールを奪って……
ドリブルを開始する。
「………。まりつきか。高すぎ。で…、左手遊んでる。」
渡はいとも簡単に。
ボールを…奪いとる。
「まずはその場でつく練習をした方がいいな。」
「………はぁ～い。」
